飲食店独立開業者必見!金融機関からの資金調達
【第1回】総論(公庫からの借り入れ)
「いい物件が見つかった」「スタッフとの出会いがあった」「独立のチャンスがやってきた」など、自分の夢をかなえるチャンスが巡ってきたとき、さあ、飲食店を開業するためには、まとまった資金を用意しなければならない。そんな時、読者の皆さんはどうされますか?
自分で貯めてきたお金(自己資金)のほかに、親族からの借入やクラウドファンディング等様々な方法がありますが、本稿では「金融機関からの資金調達」にフォーカスして解説していきます。
▶どこから借りるか?
金融機関は、下記二種類に大別されます。結論を先に申し上げると、開業資金を調達するのであれば、まずは下記②からの融資を検討することになります。
① 民間の金融機関 (都銀・地銀・信用金庫etc.)
② 政府系金融機関 (日本政策金融公庫etc.)
上記①は、民間企業が運営している金融機関のことです。あくまでもビジネスの一環としてお金を貸し出すため、これから開業しようとしている人(つまり実績の乏しい方)が融資を受けるには、ハードルが高い先となります。民間金融機関が貸し出すお金の大元は、個人や企業の預金であり、失敗する確率の高い新規ビジネスへの融資は慎重にならざるを得ないのです。
上記②はざっくりした表現をすれば、税金で動いている金融機関のことです。市場原理に基づく①とは異なり、公共性や社会的な使命を優先して動く点に特徴があります。その代表が日本政策金融公庫です(以下「公庫」と略します)。公庫は「これから開業しようとする人をサポートする」というミッションを帯びた金融機関なのです。
▶公庫の新創業融資制度
新規開業者が公庫でお金を借りる場合、「新創業融資制度」を活用することになります。この制度を活用できる方の大まかな条件は下記のとおりです。
① 新たに事業を始める方or事業開始後税務申告を2期終えていない方
② 創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方
条件②は、たとえば開業資金としてトータル1,000万円必要な場合、100万円以上は自分で用意してもらう必要があるよ、ということです(開業資金全額を本融資制度でまかなうことは不可)。自己資金をどれだけ用意できたかは、開業しようとする方の“覚悟”の表れとして、公庫も注視している点です。なお、公庫の統計調査(2022年度新規開業実態調査)によると、開業時の資金調達額の平均値、直近データで1,274万円、うち自己資金は平均271万円(全体の2割程度)となっています。
その他、融資の条件は下記のとおりです。お金を借りるにあたって、担保の差入れや保証人は原則必要ありません。
■ 担保・保証人: 原則不要
■ 融資限度額: 3,000万円 (うち運転資金1,500万円)
■ 基準金利: 2.45~3.45% (2023年3月1日現在/無担保・無保証の場合)
※ 本稿執筆時点では、創業支援貸付利率特例制度が適用され、0.65%低い金利(雇用の拡大を図る場合は0.9%低い金利)が適用されます。金利の詳細につきましては公庫にて確認願います。
ちなみに、融資する金額が大きい場合、民間の金融機関にも声をかけて融資を受ける場合があります。これを公庫と民間金融機関による「協調融資」といいます。
▶どうやって借りるか?
民間であれ政府系であれ、金融機関からお金を借りるには「こんなカタチで返済します」という計画を提出していく必要があります。本制度を活用するのであれば、『借入申込書』とともに、『創業計画書』の作成・提出が求められます。同書式は、下記URLからダウンロードすることができます。
〇日本政策金融公庫(国民生活事業)各種書式ダウンロード
『借入申込書』(上表「1」)は、形式的な事柄を記載するだけの書式であって、作成はそれほど難しくないはずです。記入例(上表「2」)も用意されているので、分からない事があれば、公庫に確認しつつ記入欄を埋めていって下さい。
一方、『創業計画書』(上表「3」)は、「どんなビジネスを展開して、いくら稼ぐか!?」を記載するものです。当然、その内容は開業する人によって千差万別です。いくつかの業種については記入例(上表「4」)も用意されていますが、記載する際には多少“押えておきたいポイント”があります。
▶金融機関が“最も気にしていること”
融資にあたり、金融機関が最も気にしていることは何か。それは、「貸したお金が返ってくるかどうか!?」です。民間であれ政府系であれ、金融機関が貸し出すお金の大元は、我々が預けたお金、もしくは、支払った税金なのですから。故に『創業計画書』の記載内容、公庫サイドの不安を払拭するようなものである必要があります。
いわゆる謙虚な日本人的な「できるかどうか分かりませんが、がんばってみます」といった記載内容では不安が残りますし、かと言って、何の根拠もないのに「めちゃくちゃ儲かります!」といった計画を描いても信じてもらうのは難しいでしょう。
▶『創業計画書』のつくり方
それでは、公庫に「この人ならお金を貸しても大丈夫だ」と思ってもらえるような『創業計画書』をつくるにはどうしたら良いか。次回以降、洋風居酒屋を開業する場合の記入例を採り上げながら解説していきます。
〇『創業計画書』 洋風居酒屋の記入例 【PDF】
◆経営コンサルタント(中小企業診断士・社会保険労務士)加藤健一郎
1975年生まれ、三重県四日市在住。大学卒業後、デパートの販売促進部に勤務。30歳で退社後、中小企業診断士・社会保険労務士の資格取得後、経営コンサルタントとしてのキャリアを積む。2012年、四日市に個人事務所 『さくら経営支援室』 を開設。中小企業の会社経営を財務・労務の両面からサポートしている。
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